パーキンソン症状、パーキンソン病、パーキンソン症候群とは?

パーキンソンの ”症状„ ”病„ ”症候群„の意味する所は大きく異なります。手足の震え(安静時振戦)、筋肉のこわばり(筋固縮)、運動の鈍化(動作緩慢)、バランスや姿勢の不安定(姿勢反射障害)などの症状を「パーキンソン症状」と言います。パーキンソン症状を来す疾患の総称を「パーキンソン症候群」と言います。パーキンソン症候群に含まれる一疾患が「パーキンソン病」です。パーキンソン症候群には、パーキンソン病以外にも、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳基底核変性症などの神経変性疾患、多発性ラクナ梗塞、正常圧水頭症、薬の副作用など多数の疾患が含まれます。パーキンソン症候群には多数の疾患が含まれますが、その治療法は、疾患ごとに大きく異なります。大切なことは、パーキンソン症状があるのかどうか?を判断し、あるとすればどの疾患なのかを適正に鑑別し、疾患に適した治療を速やかに開始することにあります。

パーキンソン症候群の独特な姿勢

パーキンソン病の診断

パーキンソン病では、血液検査や頭部CT、MRIなどでは異常は認められません(その他のパーキンソン症候群を来す疾患を除外する為には必要な検査です)。
パーキンソン病やその他の神経変性疾患を特異的に鑑別する方法として、DAT ScanとMIBG心筋シンチグラフィーがあります。アイソトープを使用する為、検査可能な医療機関は限られますし、かなり高額な検査となります。当院では、必要があれば、連携病院にて検査を施行いたします。
一般的には、症状からその他のパーキンソン症候群を来す疾患を除外して、抗パーキンソン薬の効きを見て、臨床的にパーキンソン病と診断いたします。

パーキンソン病の治療

パーキンソン病は、中脳黒質の神経細胞が徐々に減少(神経変性)する病気です。中脳の黒質の神経細胞では、ドパミンが作られますが、その減少に伴い、ドパミン欠乏が起こります。年単位での進行ですので、本人も家族も加齢性の変化と思い、その症状の出現に気づかないこともあります。現在のところ神経の減少を抑える根治治療はありませんが、ドーパミンを補充するなどの対症療法によって症状の改善を期待できます。

  1. レボドパ:脳内で不足するドパミンを補充する中核療法です。レボドパは、ドパミンという神経伝達物質の前駆体であり、脳内でレボドパが代謝されドパミンとなり、不足している状態を補うことで症状を改善します。
  2. ドーパミンアゴニスト:レボドパと同様にドーパミン不足を補うための医薬品であり、レボドパに比べて副作用が少ないことが特徴です。効果としてはレボドパには劣ります。
  3. MAO-B阻害薬:MAO-Bという酵素を阻害することで、ドパミンの分解を遅らせる薬です。日内変動が強い患者さんなどに使用します。
  4. カテコールO-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬:COMTという酵素を阻害することで、レボドパが分解されるのを遅らせる薬です。日内変動が強い患者さんに使用します。
  5. ドロキシドパ:脳内で不足しているノルアドレナリンを補充します。すくみ足など歩行障害が強い患者さんに使用します。
  6. ゾニサミド:もともと「てんかん」に使用されていた薬です。レボドパの作用増強・効果延長させます。
  7. アデノシンA2A受容体阻害薬:ドパミンが不足すると、アデノシンが優位になり神経系を過剰に興奮させ、運動障害が出現すると考えらています。この薬はアデノシンの受容体を阻害し、アデノシンの働きを抑え、ドパミンとのバランスをとることにより、運動障害を改善します。