頭痛を放置しない
頭痛には、脳出血や脳腫瘍など生命の危機に直結する二次性の頭痛もあります。単純に、いつもの頭痛とは思わずに、心配があれば、すぐに受診してください。

頭痛を我慢しない
片頭痛に対す治療法は、ここ数年で急激に進歩しています。片頭痛は放置しても、生命に影響を及ぼす様なものではありませんが、日常生活には、大きな支障をきたします。我慢する必要はないと考えます。

頭痛の種類

一次性頭痛

緊張型頭痛片頭痛群発頭痛
頻度(本邦)22%8%0.4%
痛みの性状頭全体を締め付けられる様な痛み、首や肩こりと同時に起こる頭重感など頭の片側のズキズキと脈打つ様な拍動性の痛み片目の奥を「キリでほじられる様」「目玉をえぐられる様」な激痛
特徴パソコン作業など長時間一定の姿勢やストレスなどが原因となります頭痛に先立ち、キラキラした光、ギザギザの光などの視覚性前兆などを伴うこと多いです名前のごとくある一定期間(数週間から数か月)に頭痛発作が頻発します

二次性頭痛

脳出血、くも膜下出血、脳動脈解離、髄膜炎などに伴う頭痛。二次性の頭痛では、生命にかかわる疾患が原因となっていることがあり、すみやかな対処が必要です。当院でも、基幹病院と連携して対処は可能ですが、「バットで殴られた様な突然の頭痛」「いままで経験したことがない突然の激痛」などは、一刻を争う疾患の可能性もあり、ためらわず救急要請(119番)してください。

薬物の使用過多による頭痛

頭痛薬(市販薬、鎮痛剤、トリプタン製剤など)を慢性的に内服することにより、頭痛薬の効果が弱まり、さらに薬をのむという負の循環に陥り、ますます頭痛がひどくなる病態です。一旦、乱用薬をやめて経過を見ることが重要です。頭痛薬を月に10回以上内服する様な方は、薬物過多の可能性があります。

一次性頭痛の治療

緊張型頭痛

背部~頚部の筋肉へのストレス(長時間のデスクワークや頚椎症など)、ストレス、不安、うつ、薬物乱用など、その原因は多岐にわたります。病態に基づき、消炎鎮痛剤、抗不安薬、抗うつ薬、筋弛緩薬などを用います。

片頭痛

片頭痛の治療に関しては、近年、注射薬の登場などもあり、多種多様の治療方法があります。大きく分けて、頭痛時に内服す頓服薬と発作予防を目的とした定期薬があります。

発作時頓服薬
トリプタン:頭痛発作時の中心となる薬です。トリプタン製剤には、多種類の薬があり、ご自分にあった薬を見つけることが大切です。注意点としては、内服するタイミングが非常に重要で、頭痛発作が始まる初期(30分以内)に内服しなければ、効果的な頭痛軽減効果は望めません。内服開始直後の患者さんでは、間違ったタイミング内服され、効果がないと自己判断され、中止される方がおられます。この場合、本来なら著効するはずの薬を、みすみす放棄してしまっている可能性もあります。適切な片頭痛薬を選択するには、時に多種類の薬を試してみることも必要となります。また、適切なタイミングで内服を行う為には、患者さんも病態への理解が不可欠です。
トリプタン製剤は、その作用機序として血管収縮効果があります。その為、虚血性の脳心血管系疾患を合併されている方は、内服していただくことができないことがあります。
 製品例:イミグラン(スマトリプタン)、マクサルト(リザトリプタン)、レルパックス(エレトリプタン)、ゾーミック(ゾルミトリプタン)、アマージ(ナラトリプタン)

レイボー(ラスミジタン):2022年1月に承認された薬です。選択的セロトニン1F受容体作動薬です。心血管系の虚血性合併症を持っている方の片頭痛、発症から時間が経過した片頭痛、内服のタイミングがわからない片頭痛(起床時から認められる片頭痛や発症時間がわからない片頭痛)などに適しており、トリプタン製剤と比較して、使用しやすいお薬と考えられますが、めまいや眠気の頻度が高く、注意が必要です。

・消炎鎮痛剤:ロキソニン、ボルタレン、カロナールなど。

発作予防薬
血管拡張薬 ミグシス(塩酸ロメリジン)
抗てんかん薬 デパケン(バルプロ酸)、トピナ(トピラマート)
降圧薬 インデラル(プロプラノロール)
抗うつ薬 トリプタノール(アミトリプチリン)

CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)関連予防薬
2021年から、かねてから期待されていたCGRP関連予防薬が、使用可能となりました。片頭痛の発生メカニズムとして、三叉神経血管説が受け入れられておりますが、CGRPはその中心的役割を担うペプチドです。CGRPの活性化をブロックすることで片頭痛発症を予防する注射薬です。
製品例:エムガルティ(ガルカネズマブ)、アジョビ(フレマネズマブ)、アイモビーグ(エレヌマブ)

群発頭痛

発作時には、酸素吸入(100%酸素 15分程度)、スマトリプタンの皮下注射が効果的です。スマトリプタンの注射に関しては、自己注射キットを用いて自宅で行うことも可能です。一般的な消炎鎮痛剤は、無効なことが多いです。